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昨日までの混沌とした飲み会が嘘のように、爽やかな朝だ。
津別の朝は、札幌の朝よりも心地が良い。
宿泊しているスポーツ交流館では朝食が出ない。
そのため、朝食を兼ねて早い時間帯から視察に赴く。
町の中心にほど近い旧商店街の一角に、その建物はあった。
JIMBAは空き家をリノベーションして生まれたコワーキングスペース。
オフィスをレンタルし、共同で使用することのできる施設だ。
立ち上げには、地域おこし協力隊として移住した立川氏が中心となり、町内外のボランティアが協力した。
現在は、立川氏が立ち上げた道東テレビの他、津別町のまちづくり会社も入居している。
クリエーターが集える場所として、居心地の良い空間が広がる。
空き家とは思えない雰囲気だ。
JIMBAの中には、シェアバーとして町民がバーテンダーになれるカウンターも設置。
夜だけでなく、朝は町内の幾島コーヒー研究所の幾島氏が提供するモーニングも楽しめる。
モーニングは幾島夫妻が手作りしたパンに、挽きたてのコーヒーがついてわずか500円。コーヒーのおかわりも自由だ。
現在では、津別町で唯一のモーニングを提供する施設となっている。
津別の朝に頂く幾島氏のモーニングセットとコーヒーは格別だ。
500円でもかなりのボリュームだが、欲を言えばもう1セット食べたくなる。
それほどの味が楽しめる。
JIMBAを中心に、人の流れが出来つつあるという。
人口減少が進む町では、関係人口に注目が集まっている。
関係人口とは、移住はしなくても、その町を定期的に訪れる、特産品を定期的に購入するといった、その町や地域と関係を持つ人々のことだ。
人口が減ったとしても、関係人口が多ければ町を維持していくことも可能だ。
いわゆる「田舎」では、外部との関わりがあまりなく内向きな町が多い。
だが、津別は外部からの刺激を常に求めている人々がいる。
外部にオープンな環境が整う町は、正直珍しい。
役場の地方創生グループの高橋氏も、関係人口の増加に注目しているという。
既に津別町の関係人口の一部とも言えるHALCCが、関係人口を増やす取り組みを考えるのも、一つの手であろう。
朝食を済ませ、今度は山の方へと車を走らせる。
ランプの宿 森つべつに到着した。
森つべつの隣には森林を整備した自然公園、通称「ノンノの森」が広がる。
今年オープンしたばかりのネイチャーセンターでは、森林ツアーなど各種ツアーの申し込みが可能。
開放的なフロアが印象的だ。
ノンノの森は山道が整備されているものの、森などの自然環境はそのままの状態になっている。
森の本来の姿を残すのがコンセプトだ。
NPO法人 森のこだまの代表である上野氏のツアーは大変人気。
人と自然が組み合わさって、魅力的なスポットとなっている。
こうした人たちをどうやって町に呼ぶか、埋もれた資源を発掘できるかが、まちづくりの肝だ。
何にもせずに、ただPRするだけでは無駄でしかない。
訪問の数日後の藤村Dのトークショーを、書きながら思い出す。
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森つべつを後にして、町のほぼ反対側へ向かう。
相生が目的地だ。
道の駅あいおいは、津別町唯一の道の駅。
可愛いデザインが特徴的なクマ焼きが人気だ。
今ではすっかり人気商品になってしまった。
わざわざクマ焼きを買い求めて、遠くから訪れる方もいるという。
隣接する旧相生駅の駅舎には、カフェが入居している。
そこで楽しめるモンゴル風水餃子は、あっさりだけど肉の旨味が詰まっている。
道の駅で人気のクマ焼きだが、これは町内に在住している方がデザインしたものだ。
その方の名前は、大西重成氏。
かなり有名なデザイナーで、様々な曲のジャケットなどの作品をデザインしている。
大西氏は、故郷の津別町でシゲチャンランドを、私設美術館として運営している。
古い農場跡地を買い取り、自ら改築してオープンにこぎつけた。
作品のインパクトはどれも絶大。
だが、どの作品も日常的に使用されているものから作られているのが分かる。
自分も、最初の訪問時は度肝を抜かされた。
だが、不思議なことに2回目の訪問であった今回は、懐かしさや落ち着ける雰囲気を感じた。
実際、道外や海外から、ここを目指して訪れる方も多いという。
津別の不思議な美術館だ。
館長の大西氏だが、チケットのモギリや清掃まで、自分で行なっている。
だから、シゲチャンランドに来れば大西氏には会えると考えて良い。
大西氏の言葉で印象に残っている言葉がある。
「昔は町や周りから与えられるだけだったけど、今度は何かを与えられるようになりたいと思ってここをオープンしようと決めた」
文化や伝統をただ享受するだけでなく、自分も生んで返していく。
そうやって、歴史が作られてきたように思われる。
不思議な博物館で、ちょっと壮大なことを考えてみたりもした。
その後、移住定住サイトからの取材などを経て、訪問は終了した。
今回は、今年からHALCCに参加する学生も多かったため、町の大枠を掴むための視察、学生側から現段階で実施したい企画の提案などを行なった。
津別町は、役場や一部の住民の奮闘で、非常に画期的な取り組みが行われている。
この町は、変わろうとしつつある。
その一助として、学生が関わっていくことができれば、どんなに良いだろう。
これからが、正念場だ。
文責:14期 和泉優大